2022年2月のロシアによる軍事侵攻以降、ウクライナは全土で激しい戦闘やミサイル攻撃にさらされ、今なお多くの市民が避難を余儀なくされるなど、極めて困難な状況が続いています。こうした厳しい現実の一方で、ウクライナはかつて高い技術力と優秀な人材、豊富なイノベーションを背景に、IT産業が国の成長を牽引する存在として国際的に高く評価されてきました。本記事では、ウクライナIT産業の本来のポテンシャルと、現在直面している未曾有の困難を客観的に整理し、今後の展望についても考察します。
ウクライナは歴史ある工科大学や教育機関が多く、STEM(科学・技術・工学・数学)分野に強いという伝統があります。数学・物理・コンピュータサイエンスに優れた高度な技術力を持つIT人材を多数輩出していたことから、高品質なオフショア開発先として注目されていました。
ウクライナは欧米諸国と比べて人件費が低く、高品質なサービスを提供できるため、コストを大幅に抑えつつ優秀なIT人材を活用できる点が強みでした。特にスタートアップや中小企業にとって、限られた予算で高品質な開発を実現できることが注目されていました。
ウクライナは欧州と時差が少なく、地理的にも近いため、リアルタイムでのコミュニケーションや迅速な意思決定が可能です。また、多くの欧州企業との協業実績があり、文化的な適合性も高いため、プロジェクト運営がスムーズに進む点が強みとされていました。
ウクライナではロシアの侵攻により、発電所や送電網などのインフラが広範囲に破壊され、大規模な停電が頻発しています。IT企業やオフショア開発拠点では業務継続が極めて困難な状況です。また、通信インフラも深刻な被害を受け、4,000以上の基地局や60,000kmの光ファイバーが破壊されています。停電や通信障害が頻発することで、プロジェクトの進行や納期遵守に大きな影響が生じています。
戦争の影響でウクライナIT企業は開発者の安全確保が急務となり、多くの企業が従業員を西部地域や国外へ避難させました。たとえば大手IT企業SoftServeは、従業員の半数を西部へ、残り半数をポーランドやブルガリアなど近隣国に退避させています。さらに、ドイツなど欧州各国や日本でもウクライナ避難民IT人材の採用が進み、国外移転が加速しています。
戦争の影響でウクライナのIT産業では、インフラ破壊や停電、通信障害により開発環境が不安定となり、プロジェクトの進行が大幅に遅延、または中断するリスクが高まっています。エンジニアの国外避難や人材流出も進み、チーム体制の維持が困難となることで、契約履行が難しくなり、納期遅延や契約破棄のケースも増加しています。
国際的な経済制裁や取引規制により、ウクライナ企業との国際送金や契約履行が困難になり、取引先企業もリスク回避のため新規案件や継続契約を控える動きが強まっています。また、地政学的な不安定さから、今後の事業継続性や投資判断に対する不透明感が増し、プロジェクトの中断や遅延リスクも高まっています。
ウクライナIT業界は戦争による極めて厳しい状況下でも、事業継続や国への貢献を目指し、さまざまな取り組みを実践しています。多くのIT企業は従業員の安全確保を最優先し、危険地域から西部や国外への避難を進めつつ、分散したチーム体制でリモートワークを実施。停電や通信障害が頻発する中でも、発電機やモバイルインターネットを活用し、地下室や避難所で作業を継続する事例が報告されています。
また、IT分野の専門性を生かし、サイバーセキュリティ分野での貢献も顕著です。ウクライナのIT技術者の一部は「IT軍」に参加し、サイバー防衛や敵インフラへの攻撃など、国家防衛にも積極的に関与しています。国外避難先でも事業を継続し、グローバルなプロジェクトへの対応や新たな雇用創出に取り組む企業も増えています。
侵攻以前のウクライナにおけるエンジニアの人月単価は、1時間あたり30~60ドルが一般的で、月額換算で約20万~30万円程度でした。ただし、これは過去の相場であり、現在の戦時下ではこの費用感はほとんど意味をなさない可能性がある点に留意が必要です。
戦争終結後のウクライナ復興において、IT産業はインフラ再建や行政のデジタル化、経済成長の推進力として大きな役割が期待されています。理数系人材や先端技術を活かし、AIやサイバーセキュリティ分野などで新たな産業創出や雇用拡大が見込まれます。ただし、復興の時期や規模は依然として不確実です。
国外に避難したウクライナのエンジニアやIT企業は、ポーランドやドイツなど欧州各国に拠点を移し、現地やリモートでの事業継続を図っています。今後は、こうした避難先の人材や企業と日本を含む各国企業が協業することで、高度な技術力を活かした新たな国際連携やプロジェクト推進の可能性が広がります。ただし、体制や拠点の変化に伴う調整も必要です。
ウクライナIT分野では、人道支援や復興支援の一環としてオープンソース開発やIT協力が進んでいます。たとえば、オープンソース情報(OSINT)を活用した戦争犯罪の調査や、サイバーセキュリティ分野での国際的な連携が実践されています。
戦争終結後の展望に期待感はあるものの、現在も戦争状態が続き、インフラや労働環境の不安定、停電や通信障害のリスクが高いため、ウクライナへの新規委託は依然として極めて高いリスクを伴います。
ウクライナのIT産業は、優秀な人材と高い技術力、豊富なイノベーションで国際的に高い評価を受けてきました。本来、欧米やアジアの企業との連携を通じて成長を続け、復興や経済発展の原動力となるポテンシャルを持っています。しかし現在、戦争によるインフラ破壊や人材流出、事業継続リスクなど未曾有の困難に直面しています。ビジネス判断に際しては、こうした現状を正しく理解し、人道的配慮と安全保障上のリスクの検討が必要です。ウクライナへの新規委託は、慎重に判断してください。
ベトナムのオフショア開発で、案件の分野別に確かな実績(※1)を持つ企業を紹介。
異なる開発ニーズに応じて、どのような専門性があるのかぜひご覧ください。
長年の開発実績の中でも、強固なセキュリティおよび緻密なプロジェクト管理や高い品質が求められる金融・通信業界から評価を得ている(※2)ひけしや。
日本発企業でもあり、現地常駐日本人スタッフのサポートによって、オフショア開発でありがちな品質管理ポリシーのギャップを生みません。業界特有の厳しい品質基準をクリアできる体制が整っています。
プロジェクト数:約1,000件
開発経験:20年
200名を超えるクラウドエンジニアの在籍、AWSの認定パートナー(※3)であるなどクラウド移行に関して実力が光るCMC JAPAN。オンプレからでも、クラウド同士の統合でも柔軟にカスタマイズが可能です。
官公庁で使われているレガシーシステムもスムーズにシステム移行をすることができます。
プロジェクト数:-
開発経験:30年以上
エンジニアの平均月単価が40万円(税不明)のベトナム(※4)で17.5万円~アサインが可能なオルグローラボ。最短即日のアサイン(※5)も可能で、迅速な開発体制構築とコスト競争力を提供します。
インタラクティブな要素が必要とされるゲーム開発も行っており、デザイン面とユーザーエクスペリエンスが両立されたアプリ開発を行います。
プロジェクト数:2,000件以上
開発経験:10年
※1 公式HPに記載されている情報から「案件数」「事業年数」いずれかが豊富であるとわかる企業
※2 参照元:ひけしや公式(https://hikesiya.co.jp/solution/labo)(https://hikesiya.co.jp/timeandmaterial)2024年8月6日時点
※3 参照元:CMC Japan公式(https://cmc-japan.co.jp/blog/why-migrate-to-the-cloud/)2024年8月6日時点
※4 参照元:オフショア開発.com『オフショア開発白書2023』(https://www.offshore-kaihatsu.com/contents/vietnam/price.php)
※5 参照元:オルグローラボ公式(https://allgrow-labo.jp/lp/)2024年8月6日時点