オフショア開発は、コスト削減の手段としてだけでなく、グローバルなリソース活用や最新技術へのアクセスポイントとして、その重要性を増しています。しかし、「オフショア開発って昔のイメージのまま…」「最近の動向がよくわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、オフショア開発の過去から現在への変化、2025年現在の最新トレンド、そして主要な開発国の傾向と強みについて、専門家が分かりやすく解説します。今後のグローバル戦略を考える上で、ぜひ参考にしてください。
オフショア開発は、時代とともにその姿を大きく変えてきました。まずは、かつてのオフショア開発と、現代のオフショア開発がどのように異なるのかを見ていきましょう。
かつてのオフショア開発は、主にコスト削減を最大の目的として利用されていました。特に人件費の安い国へ、比較的単純なコーディングやテスト工程を委託するケースが多く見られました。開発モデルとしては、要件定義から設計、開発、テストまでを順番に進めるウォーターフォール型が主流でした。
しかし、当時はコミュニケーションの難しさや文化・商習慣の違い、品質管理の未熟さなどから、「安かろう悪かろう」といったネガティブなイメージがつきまとうことも少なくありませんでした。言語の壁による仕様の誤解や、納品物の品質トラブル、プロジェクト管理の困難さなどが課題として挙げられていました。
近年、オフショア開発は再び多くの企業から注目を集めています。その理由は、単なるコスト削減にとどまらない多様なメリットが認識されてきたためです。現代のオフショア開発は、IT人材不足の解消、専門技術や特定分野のノウハウ獲得、開発スピードの向上、そしてグローバル市場への足がかりといった戦略的な目的で活用されるようになっています。
コミュニケーションツールの進化や、オフショア開発会社側の品質管理意識の向上、多様な開発手法への対応力の強化なども、この変化を後押ししています。もはやオフショア開発は、単なる「下請け」ではなく、企業の成長を支える戦略的パートナーとしての地位を確立しつつあるのです。
オフショア開発の世界も日々進化しています。ここでは、2025年現在の注目すべき最新トレンドを3つご紹介します。
従来型の請負契約に加え、クライアント専属の開発チームを期間契約で確保する「ラボ型開発(ODC)」の需要が高まっています。ラボ型開発は、仕様変更に柔軟に対応しやすく、継続的な開発や改善が必要なプロジェクト、特にアジャイル開発との親和性が高いのが特徴です。自社の開発チームのようにリソースをコントロールできるため、ノウハウの蓄積や開発スピードの向上にもつながります。
市場の変化が速い現代においては、短いサイクルで開発とテストを繰り返す「アジャイル開発」が主流になりつつあり、オフショア開発においてもこの手法に対応できるパートナーの重要性が増しています。
全ての開発工程をオフショアに委託するのではなく、国内の自社チームやニアショア(国内の地方都市や近隣国への委託)と、オフショアを戦略的に組み合わせる「ハイブリッド開発」もトレンドの一つです。例えば、要件定義や基本設計、プロジェクト管理といった上流工程や機密性の高い部分は国内で行い、詳細設計以降の開発・テスト工程をオフショアに任せる、といった分担が考えられます。
これにより、コミュニケーションの円滑化、品質管理のしやすさ、セキュリティの担保といった国内開発のメリットと、オフショア開発のコストメリットやリソース確保の容易さを両立させることが可能になります。
新型コロナウイルスのパンデミック以降、リモートワークが世界的に普及し、オフショア開発においてもリモートでのプロジェクト遂行が当たり前になりました。ビデオ会議システムやチャットツール、クラウドベースのプロジェクト管理ツールなどの進化が、これを強力に後押ししています。
これにより、地理的な制約がさらに低減され、世界中から最適なスキルを持つ人材を集めてプロジェクトチームを編成する「真のグローバルチーム」の実現が加速しています。多様なバックグラウンドを持つメンバーが協働することで、イノベーションの創出も期待されます。
オフショア開発先として選ばれる国は多岐にわたりますが、それぞれに特徴や強みがあります。ここでは代表的な3カ国について、最新の傾向を見ていきましょう。
ベトナムは、近年日本企業からのオフショア開発委託先として非常に人気が高い国です。親日的な国民性や勤勉さ、地理的な近さ、時差の少なさなどが理由として挙げられます。IT教育に国を挙げて力を入れており、若くて優秀なIT人材が豊富です。かつては品質面での課題も指摘されましたが、近年は多くの企業が国際的な品質管理基準(ISO、CMMIなど)を導入し、品質意識と技術力が著しく向上しています。日本語対応可能なブリッジSEやエンジニアも増えており、日本企業向けのWebシステム開発やアプリ開発、ラボ型開発などで多くの実績があります。
インドは、世界有数のIT大国であり、オフショア開発の歴史も長いです。最大の強みは、圧倒的なIT人材の層の厚さと、AI、IoT、ビッグデータといった先端技術分野における高い専門性です。大規模で複雑なプロジェクトや、高度な技術力を要する研究開発案件などにも対応可能です。英語が準公用語であるため、欧米企業からの委託も多く、グローバルスタンダードな開発プロセスに慣れている企業が多いのも特徴です。日本との時差(約3.5時間)を活かした24時間体制での開発も可能です。
フィリピンの大きな特徴は、国民の英語力の高さです。コールセンターやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業務で多くの実績があり、そのコミュニケーション能力はソフトウェア開発においても活かされています。欧米文化への理解度も比較的高く、特に欧米市場向けのプロダクト開発において強みを発揮します。ホスピタリティ精神にあふれた国民性も、円滑なコミュニケーションを助ける一因とされています。Webデザインやモバイルアプリ開発、ゲーム開発などで注目されています。
多くのオフショア開発国がある中で、特に日本企業にとってベトナムが魅力的な選択肢として注目される理由を、もう少し深掘りしてみましょう。
ベトナムは、他のアジア諸国と比較しても依然として人件費のコストメリットがあります。しかし、単に安いだけでなく、近年は品質に対する意識が急速に高まっています。多くの開発企業が品質管理体制を整備し、日本企業の要求する品質レベルに応えようと努力しています。このコストと品質のバランスの良さが、多くの日本企業にとって魅力的に映っています。
長年にわたる日本企業との取引実績を通じて、ベトナムの開発企業は日本のビジネス文化や開発スタイルへの理解を深めてきました。日本語学習者も多く、ブリッジSEだけでなく、日本語で直接コミュニケーションが取れるエンジニアも増えています。日本企業特有の細やかな要求や「行間を読む」といったニュアンスへの対応力も向上しており、コミュニケーションの障壁が低減しつつあります。
ベトナムは、東南アジア諸国の中でも比較的政治・社会情勢が安定しており、経済も持続的な成長を続けています。これは、中長期的なパートナーシップを考える上で重要な要素です。政府もIT産業の振興を国家戦略として掲げており、今後のさらなる発展とIT人材の質の向上が期待されています。このような将来性への期待感も、ベトナムが選ばれる理由の一つです。
オフショア開発は、もはや単なるコスト削減の手段ではなく、企業の成長戦略を実現するための重要な選択肢となっています。今回ご紹介したような最新のトレンドや、各国・地域の特徴を正しく理解し、自社の目的やプロジェクトの特性に合わせて最適な活用方法を検討することが重要です。
特に、ラボ型開発やアジャイル型開発への対応、ハイブリッドな開発体制の構築、そして真のグローバルチームとしての連携は、今後のオフショア開発を成功させる上での鍵となるでしょう。常に変化するグローバルな開発環境の動向を注視し、戦略的にオフショア開発を活用することで、ビジネスの可能性を大きく広げてください。
ベトナムのオフショア開発で、案件の分野別に確かな実績(※1)を持つ企業を紹介。
異なる開発ニーズに応じて、どのような専門性があるのかぜひご覧ください。
長年の開発実績の中でも、強固なセキュリティおよび緻密なプロジェクト管理や高い品質が求められる金融・通信業界から評価を得ている(※2)ひけしや。
日本発企業でもあり、現地常駐日本人スタッフのサポートによって、オフショア開発でありがちな品質管理ポリシーのギャップを生みません。業界特有の厳しい品質基準をクリアできる体制が整っています。
プロジェクト数:約1,000件
開発経験:20年
200名を超えるクラウドエンジニアの在籍、AWSの認定パートナー(※3)であるなどクラウド移行に関して実力が光るCMC JAPAN。オンプレからでも、クラウド同士の統合でも柔軟にカスタマイズが可能です。
官公庁で使われているレガシーシステムもスムーズにシステム移行をすることができます。
プロジェクト数:-
開発経験:30年以上
エンジニアの平均月単価が40万円(税不明)のベトナム(※4)で17.5万円~アサインが可能なオルグローラボ。最短即日のアサイン(※5)も可能で、迅速な開発体制構築とコスト競争力を提供します。
インタラクティブな要素が必要とされるゲーム開発も行っており、デザイン面とユーザーエクスペリエンスが両立されたアプリ開発を行います。
プロジェクト数:2,000件以上
開発経験:10年
※1 公式HPに記載されている情報から「案件数」「事業年数」いずれかが豊富であるとわかる企業
※2 参照元:ひけしや公式(https://hikesiya.co.jp/solution/labo)(https://hikesiya.co.jp/timeandmaterial)2024年8月6日時点
※3 参照元:CMC Japan公式(https://cmc-japan.co.jp/blog/why-migrate-to-the-cloud/)2024年8月6日時点
※4 参照元:オフショア開発.com『オフショア開発白書2023』(https://www.offshore-kaihatsu.com/contents/vietnam/price.php)
※5 参照元:オルグローラボ公式(https://allgrow-labo.jp/lp/)2024年8月6日時点